介護老人保健施設という施設があることは知っているけれど、どんな特徴をもった施設か詳しく知っている方は少ないでしょう。この記事では介護老人保健施設で働くことをイメージしやすいように以下の内容を解説します。
- どのような介護を行う施設なのか
- どのようなやりがいかあるのか
- マイナスに感じる面はあるのか
また介護老人保健施設で働くのに向いているタイプの人もご紹介します。介護職として働いてみようと考えているけれど、どのような施設で働こうか迷っている方、特養に魅力は感じるけれどもしかしたら自分には向かないかもしれないと感じている方、ぜひ参考にしてください。
介護老人保健施設の特徴
介護老人保健施設は略して「老健」と呼ばれる公的施設です。
入居型の施設のため、24時間体制のケアで夜勤ありのシフト制勤務です。在宅復帰のためのリハビリを重視している施設で、要介護度1から介護度の重い方まで幅広い利用者が入居しています。老健では、各職種が専門性を発揮しながら医療や保健、介護など職種の垣根を超えてチームとしてサービスを提供する「他職種協働」を行っています。
(出典:全国老人保健施設協会期待される老健の役割)
老健の特徴的な点は以下の通りです。
- 運営母体が公的機関
- 退院後のリハビリ利用が多い
- 入所期間が短い
順番に解説しましょう。
運営母体が公的機関
老健は医療法人や社会福祉法人、地方公共団体等の公的機関によって運営されています。公的機関は国や自治体からの補助金を受けられるため、民間の営利企業よりも安定した運営が行われています。そのため福利厚生が手厚く給料も比較的高いのが特徴です。
退院後のリハビリ利用が多い
老健は病院からの退院後のリハビリ利用が多いのが特徴です。なぜならば老健は在宅復帰への支援を目的とした施設だからです。機能回復目的のリハビリはもちろんのこと、現在の状態の中で工夫すればできることを見つけ増やして行くのも老健でのリハビリに含まれます。
また中には、在宅介護が困難と医師に判断され老健に入居するケースもあります。この場合は老健に入居しリハビリを行い、状態が改善したら在宅復帰するという流れです。
入所期間が短い
老健は入所期間が原則数ヶ月と短いのが他の施設と異なる特徴です。なぜなら老健は在宅復帰を目指す利用者が入所する施設だからです。
同じ公的施設の特養、介護療養型医療施設と比較しても入所期間の短さがよくわかります。
特養 | 老健 | 介護療養型医療施設 | |
平均在所日数 | 1405日 | 311日 | 484日 |
(出典:厚生労働省介護老人保健施設 (参考資料)P8)
介護老人保健施設で働くメリット
介護老人保健施設で働くやりがいやメリットはいくつかありますが、主なものは以下の3点です。
- 特養に比べて体力的に負担が少ない
- 医療やリハビリに関する知識を得られる
- 介護施設の中では比較的給料が高い
順番に解説していきましょう。
特養に比べて体力的に負担が少ない
老健は特養に比べると体力的な負担が少ない傾向があります。なぜならば、老健の入居者は要介護度が1以上と比較的介護度が低く、体力を使う身体介護を必要とする重度の要介護者の割合が特養と比べて少ないからです。その分老健では短い期間で利用者の状態を把握し、ケアする対応力とコミュニケーション力が必要となります。
またさまざまな介護度の利用者がいるので、臨機応変に対応できる介護スキルも必要です。
医療やリハビリに関する知識を得られる
老健で働くと医療やリハビリに関する知識を得ることができます。老健ではさまざまな職種がチームとしてサービスを提供しているからです。医療やリハビリなどの他職種のサポートをすることで貴重な知識と経験を得ることができます。医療ケアやリハビリなどに対しても正しい理解ができるでしょう。
老健では以下の職種がチームを組んでサービスを提供します。
- 医師
- 看護職員
- 介護職員
- リハビリテーション職員
- 薬剤師
- 管理栄養士
- 歯科衛生士
- ケアマネージャー
- 支援相談員
介護施設の中では比較的給料が高い
老健は介護施設の中では特養に次いで給料が平均的に高い傾向があります。中でもパートの給料は特養よりも高いという結果が出ています。
施設 | 平均給料(常勤) | 平均給料(非常勤) |
特別養護老人ホーム | 345,590 | 202,950 |
介護老人保健施設 | 338,390 | 289,050 |
介護療養型医療施設 | 287,070 | ・・・・ |
(出典:厚生労働省 「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果 厚生労働省老健局老人保健課」
老健は24時間体制のケアを行っているため夜勤があります。夜勤を行えば夜勤手当により収入アップが可能です。働き方や施設の特徴が自分の特性とあっていれば、高い給料で働けるのは大きなやりがいになります。
介護老人保健施設で働くデメリット
老健は他の介護施設に比べて少し異なる点があります。捉え方は人それぞれですが、自分の目指す介護と大きな差異ができないように、事前に知っておいた方が良い点を2つ解説します。
医療重視のサービスになる
老健は基本的には在宅復帰を目指し、医療やリハビリのサービスを提供する施設です。さまざまな職種の人がともに働く中で、他の介護施設に比べ介護よりも医療やリハビリ的視点が重要視される傾向があります。他職種との考え方が合わずもどかしい思いをすることもあるでしょう。また特養に比べると介護度が低い利用者が比較的多いため、身体介護などの介護スキルをフル活用したいと考える人にとっては少し物足りなく感じてしまうかもしれません。
しかし医療やリハビリの視点を取り入れることで、自分の介護技術や知識を向上できます。また医療的なケアを学べれば、介護職としてスキルアップすることも可能です。また職種が異なり視点が変われば見解も違うということも受け入れられるでしょう。
自分がどのような介護を提供したいか、医療的なスキルを身につけたいかなどを働く施設を選ぶ際に考えておくことをおすすめします。
長期的に向き合う介護ができない
老健は基本的に入居期間が数ヶ月と決まっているため、長期的な介護をすることはできません。時間をかけて信頼関係を築き、一人一人に長く向き合いたいと考える人にとっては寂しい思いをすることになり、モチベーションの低下に繋がる可能性もあります。
しかし在宅復帰を望んでいる高齢者が、老健でのケアにより機能を回復し希望通り自宅での生活に戻れることはとても喜ばしいことです。在宅復帰に向けて一緒に頑張ることができ、念願叶って退所する際には達成感とやりがいを感じることができるでしょう。
介護老人保健施設で働くのに向いている人
実際どんな人が老健で働くのに向いているのでしょうか。
介護職全般に言えることですが
- 人と関わるのが好き
- 相手の気持ちを思いやれる
- 視野が広い
- 新しい知識を得ることに熱心
上記のような方は、介護の仕事をするのに向いている特性を持っています。
さらに今回はその中でも特に老健で働くのに向いている人を紹介します。必ずしも全ての素質を持っている必要はありません。そのような傾向があれば、なお良いくらいの気持ちで参考にしてください。
医療的なケアに携わりたい人
老健では医療職のサポートをする機会があります。実際に医師や看護師などと働くことで医療的ケアの知識と経験を得られます。 身体介護だけでなく医療的ケアにも携わってみたいと考えている人、医療的ケアを学び介護職としてスキルアップしたいと考える人にもおすすめです。
リハビリについての知識を得たい人
老健ではリハビリの知識を得ることができます。なぜなら老健では理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などがメインとなってリハビリを行い、介護職はそのサポートをするからです。またそこで得たリハビリの知識を活かして、利用者に日常生活でもリハビリを取り入れた介護をすることができます。
コミュニケーション能力の高い人
老健ではさまざまな人と関わる機会が多いため、コミュニケーション能力の高い人が向いています。入居者は短い期間で入れ替わるため、少ない時間でコミュニケーションをとり信頼関係を築く必要があります。また他職種の人と共に働く上でも、密なコミュニケーションはスムーズな人間関係と業務の遂行には欠かせません。
人と話すのが苦ではない人、自分から話しかけることに抵抗がない人は向いているでしょう。
まとめ
介護老人保健施設の特徴やメリットとデメリット、また老健で働くのに向いている人についても紹介しました。老健は、公的施設のため運営が安定しており比較的高い給料をいただくことができます。医療やリハビリの知識や経験を得ることもでき、介護職としてステップアップを考えている人にはおすすめの施設です。
在宅復帰という目標に利用者とスタッフが一丸となって向かっていく一体感を味わえるのは老健ならではといえるでしょう。また努力のかいあり退所し利用者が自宅へ帰ることができる時には共に達成感を味わうこともできます。老健の特徴を理解し職場選びの参考にしてください。
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