本記事は介護業界を目指す方、介護業界内での転職を目指す方向けとなります。
介護業界にもデジタル化の波が押し寄せています。デジタル化が進めば、慢性的な人手不足を解消できる可能性もあります。
ただ、デジタル化と言われてもよく分からないという方もいらっしゃると思います。デジタル関係の用語には様々な言葉があり、混乱しがちです。
そこで本記事では介護業界におけるデジタル化のメリットと課題を解説いたします。介護現場のデジタル化を理解すれば、変動する介護環境に適応できることでしょう。
介護業界のデジタル化とは?
介護業界のデジタル化とは、デジタル技術を利用して介護業界を改善していくことです。
介護業界のデジタル化を解説するにあたり、前提知識として以下の4点を解説いたします。ぜひご参考ください。
- デジタル化とはDXのことである
- DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称
デジタル化とはDXである
本記事で解説するデジタル化とはDXのことを指します。以下の解説内ではDXという言葉が出てまいります。全てデジタル化のこととお考え頂ければ幸いです。ではDXとは何かを次に解説いたします。
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称です。デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術を利用し組織の文化を根本的に改善することを指します。
この言葉が日本で登場したのは2018年です。経済産業省がレポートを発表してからDXは徐々に内容が更新され、現在は以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
(出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」)
デジタル化を促進すると今までできなかったことができるようになったり、難しかったことがより簡単にできるようになったりします。介護現場にDXが導入されれば、介護はより時代に適した形に進化していくことでしょう。
介護業界のデジタル化によるメリットは?
介護業界のデジタル化によるメリットは様々なものがあります。以下3点が実施されれば介護施設の文化も大きく変わります。順を追って解説いたしますのでご覧ください。
- 介護サービスの向上
- 業務効率化
- 人件費の節約
介護サービスの向上
デジタル技術の導入により介護サービスが向上いたします。
以下のような例をご確認ください。
導入するデジタル技術 | 問題 | 導入効果 |
介護記録電子化システム | ・口頭連絡やメモでの情報共有は漏れやミスが出る可能性が高い | ・人為的なミスがなくなる ・簡単な情報共有が可能 |
見守りサービス | ・巡視に時間を取られる ・夜間巡視で介護が必要な方が起きてしまう | ・巡視する時間を減らせる ・介護が必要な方の就寝率が向上 |
体調モニタリング | ・個別の確認や巡視に時間を取られる | ・システム画面で健康状態を一元管理できる |
デジタル技術を導入すると、介護が必要な方にも大きなメリットが発生します。もちろん介護士にとっても働きやすい環境になりますので、介護施設の雰囲気が良くなる可能性があります。介護サービス全体が向上すると言えるでしょう。
業務効率化
デジタル技術による業務効率化も可能です。今まで手作業や手書きで行っていた業務について、効率化することでミスを減らし、確実に実施できます。
効率化について以下の例をご確認ください。
- 勤怠管理システムの導入により、給与計算を効率的に実施
- ペーパーレス化によりオンラインで事務作業を実施
- インカムを利用し、即座に情報共有を実施
- 配車管理システムによる迅速な送迎車の手配
業務が効率化されれば、時間を他のことに使えます。無駄な時間やミスを減らし、介護施設の環境改善に役立てましょう。
人件費の節約
従来、介護士が実施していた単純な業務をロボットに任せることで人件費が節約できます。
ロボットができる作業例
- 物の運搬
- エレベーターパネルや手すりの除菌作業
- 自動排泄処理
現時点では直接介護に携わる場面は少ないです。今後、おむつ交換や入浴の介助などロボットが対応可能な場面が増えることで更に人件費が節約できる可能性が高まります。
介護業界のデジタル化による課題は?
デジタル化にはメリットだけでなく課題もあります。どのような課題があるか理解した上で準備を進めましょう。想定される課題について以下の3点を解説いたします。
- 介護士のデジタルスキル不足
- コストの増加
- セキュリティに関するリスク
介護士のデジタルスキル不足
まず、介護士のデジタルスキル不足が挙げられます。
デジタル技術を導入したとしても活用できなければ逆に不便さを感じてしまいます。介護業界に限らず、新しいものや環境にストレスを感じる方もいらっしゃると思います。現場は忙しく、新しい技術を習得する手間と時間が惜しいからです。
また、日本全体でもDXを推進するリーダーも不足しがちです。リーダーとなる人材がいない場合、組織の文化を変えていくことは非常に難しくなります。(出典:情報処理推進機構「DX白書2023」)
デジタルスキルの不足は大きな課題です。情報管理システムや勤怠管理システムなどは介護業界以外でもよく導入されております。実績が多く導入しやすいデジタル技術からスタートするのがおすすめです。また、介護士としてデジタルスキルやDXマインドを習得することも重要になるとお考え下さい。
コストの増加
次の課題として、デジタル技術の導入に伴うコストの増加です。
主な理由は以下の通りです。
- パソコンやタブレットなどハードウェアの導入が必須
- 情報管理システムや見守りサービスなどソフトウェアとして個別に購入が必要
- 導入当初はデジタル技術を学習するための研修費用が発生
- 自力でのデジタル技術導入が難しい場合、DXコンサルティングを活用
上記の通り様々なコストの発生が想定されます。なお、研修を実施しない場合でも学習時間は必要ですので時間的コストは発生します。デジタル技術を導入する場合、コストの増加も避けられないものになります。
セキュリティに関するリスク
最後に、情報のデジタル化によるセキュリティリスクの発生です。
介護記録がオンライン上に保存されることから、第三者からのサイバー攻撃を受ける可能性があります。その場合、企業の機密情報だけでなく介護が必要な方や介護士の個人情報も危険にさらされます。
また、在宅ワークを実施する場合、自宅なので気が緩みがちになります。自宅の場合も情報漏洩の危険性がありますので十分な注意が必要です。
デジタル技術の導入により、セキュリティのリスクが発生することを認識しましょう。
まとめ
介護業界におけるデジタル化について解説いたしました。デジタル化によるメリットは非常に大きいですが、導入する課題もまた大きいです。
メリット
- 介護サービスの向上
- 業務効率化
- 人件費の節約
課題
- 介護士のデジタルスキル不足
- コストの増加
- セキュリティに関するリスク
デジタル化は、下手に導入すると現場の負担が逆に増加する可能性があります。課題の解決に関して経営側および現場の双方が理解した上で進めていく必要があります。ぜひ介護施設が一体となりデジタル化を進めましょう。経営と現場が一体になることが、組織の文化を変える最初の一歩です。それこそがDXの始まりと言えるでしょう。
最後に、厚生労働省が介護現場におけるICT手引きや導入事例を紹介しておりますので、ぜひご参考ください。
(出典:厚生労働省「介護現場におけるICTの利用促進」)
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