「看取り」と「ターミナルケア」の違いは?介護職員の心構えについても解説

介護施設で働いていると、看取りやターミナルケアという言葉を耳にしますよね。このふたつの言葉を同じような意味合いで捉えている方も多いのではないでしょうか?また、終末期ケアに対してどのような心構えを持っていますか?

看取りとターミナルケアには行うケアに決定的な違いがあります。そして、利用者の死と向き合う介護職員の心のケアのためにも、通常ケアとは違う心構えを持つことが大切です。

今回は、実際に終末期ケアを経験したことがない介護職員でも看取りとターミナルケアの違いや、心構えについて理解できるよう解説していきます。

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看取りとターミナルケアの違いについて

看取りとターミナルケアは、余命僅かと診断された方に対し余生を平穏に過ごすことを目的としたケアです。無理な延命治療を行わない点は共通点といえます。

決定的な違いは、身体的・精神的苦痛に対する医療的ケアを行うかどうかという点です。

看取りは、食事や排泄の介助、褥瘡の防止、日常生活のケアがメインであり、点滴や酸素吸入などの医療的ケアを行うことはありません。

ターミナルケアは終末期医療と訳される通り、普段の日常生活のケアに加えて、点滴や酸素吸入などの医療的ケアも行います。

看取りとターミナルケアの違いを図でまとめると以下のとおりです。

延命治療・措置医療的なケア
看取り✖️✖️
ターミナルケア✖️

ここでは看取りとターミナルケアの違いについて詳しく紹介していきます。

  • 看取りは日常生活のケアがメイン
  • ターミナルケアは日常生活ケアに加えて、医療的ケアも行う

それぞれ解説していきます。

看取りは日常生活のケアがメイン

看取りとは、治療で回復が見込めない状態(終末期)に受ける日常生活のケアのことです。病気による身体的・精神的な苦痛を緩和させることで、生活の質(QOL)の向上を目指します。

通常ケアと看取り介護の違いは以下の3点です。

  • 積極的な治療は行わない(酸素吸入や点滴も含め)
  • 身体的・精神的な苦痛を緩和するケアを優先する
  • 家族への精神的な面でのケアを行う

看取り看護は、終末期における日常生活の中の介助や介護に重きを置いているといえます。

看取りについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事を参照ください。

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ターミナルケアは日常生活ケアに加えて、医療的ケアも行う

ターミナルケアとは、治療で回復が見込めない状態(終末期)に受ける医療・看護的なケアのことです。

ターミナルケアは人生の最後に行う医療とされていますが、延命治療ではありません。苦痛の緩和や尊厳ある死を迎えるための医療行為です。

  • 身体的・精神的な痛みを和らげる目的の点滴
  • 息苦しさを和らげる目的の酸素吸入
  • 栄養補給のための経管栄養や点滴

残された余生を苦しまずに過ごして頂くために、最低限の医療の提供を行うことでQOLの向上を目指します。

ターミナルケアについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事を参照ください。

施設で働く介護職必見!ターミナルケアでの役割や注意点を徹底解説
介護施設でのターミナルケアでは、余命が僅かの方に対して、身体的・精神的な苦痛を緩和してあげることが介護スタッフに求められます。利用者やその家族によって終末期に希望されるケアは異なります。対応に相違がないように、スタッフ間で十分に情報共有し、利用者に寄り添ったケアを提供しましょう。

それぞれのケア内容の違いを理解したうえで、利用者の意見を尊重しつつストレスや苦痛を軽減するためにどこまでのケアを行うかがポイントとなります。

看取りとターミナルケアにおける介護職員の心構え

終末期のケアに携わる介護職員は、通常ケアとは違う心構えを持つ必要があります

  • 1人で悩まずチームで考える
  • 通常ケアとは異なる視点をもつ
  • 死を受け入れる心の準備

3つのポイントについて、それぞれ説明していきます。

1人で悩まずチームで考える

介護職員の孤立を防ぐためにも、医師や看護師も含めチームで考えることが大切です。

どんなに経験のある介護職員でも、「何かあったらどうしよう」と不安になるのは当然です。緊急時の対応を事前に話し合うことや、職員同士で声掛けを行い同僚や先輩など周囲の人に相談することを心がけましょう。

1人で悩まず、チーム内での話し合うことや職員同士で相談することが大切です。

通常のケアとは異なる視点をもつ

終末期には通常の介護では行わないことも行うことがあります。看取りやターミナルケアでは、利用者に寄り添ったケアが重要視されるからです。

例えば、通常では嚥下機能が低下している患者には、とろみをつけた食事や食事形態の調節が必要です。しかし、終末期には普段は提供することができないものでも利用者の希望があれば少量提供することがあります。

終末期で大切なことは、安全よりも利用者の満足度であり、チームで話し合いながら本人の希望に寄り添ったケアを行いましょう。

死を受け入れる心の準備

介護職員は、終末期になると利用者の死を受け入れる心の準備が必要になります。

自分の身内でなくとも、生活を共にした利用者の死は、想像以上の負担を与えるからです。大きな虚無感に襲われたり、想定していた対応とならなかった場合などは、自分を責めてしまう介護職員もいるでしょう。

看取りやターミナルケアを行った後は、デスカンファレンス(死後の会議)を行い、今後に繋げる必要があります。これは対応した介護職員の心のケアにもなる取り組みだといえます。

まとめ

看取りとターミナルケアの決定的な違いは、身体的・精神的苦痛に対する医療的ケアを行うかどうかという点です。どこまでのケアを行うかを、利用者や家族、医師・介護職員で話し合い方針を決めていく必要があります。どちらのケアにおいても、無理な延命治療はせず余生を穏やかに過ごしていただく事を目的としています。介護職員は最後まで利用者に寄り添うことが大切です。

とはいえ、終末期に関わる介護職員は心身ともに不安定な状態になるものです。通常ケアとは違う心構えをもち、自分の心ケアを行うことも忘れずに行いましょう。

シン

介護福祉士として特別養護老人ホームに10年勤務。介護職としてフルタイムで働きながら、介護に関する情報発信を行っている。介護現場ではひとりひとりの個性を大切にする個別ケア、利用者の1日の生活を可視化して最適なケアの検討を行う24時間シートの導入を推進。現場目線の実態に即した情報発信を得意としている。

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