2021年4月から介護報酬改定に伴い、無資格の介護職に認知症介護基礎研修の受講が義務化しました。移行期間の2024年4月までは無資格でも働けますが、以降は無資格だと働けなくなります。
現在は移行期間なのですぐに働けなくなるわけではありません。ですがぎりぎりになって慌てないためにも、今の内から対策を考えておくことをおすすめします。
ここでは無資格の介護職が今後も安心して働いていくために必須となる、認知症介護基礎研修について徹底解説します。他におすすめできる介護資格もご紹介するので、介護職として今後も働いていきたい方はぜひ参考にしてみてください。
無資格の介護職はこれから働けなくなる?
無資格の介護職は2024年4月から働けなくなってしまいます。理由は介護事業所が無資格の介護職を雇用していると、行政による指導の対象となってしまうからです。
すでに資格を持っている人は問題ありませんが、無資格で働いている介護職は大変です。資格を取得するにも費用と時間がかかりますので、急に「働くには資格が必要」と言われても困ってしまいますね。
ですが心配ありません。簡単な研修を受ければ資格を取得できるので、今後もちゃんと働いていけます。
認知症介護基礎研修を受けよう!
無資格の介護職に必須となる研修は、認知症介護基礎研修です。厚生労働省が2021年に「介護の事業所は無資格の介護職に、2024年4月までに認知症介護基礎研修を受けさせてください」という趣旨の通達をしています。
無資格の介護職の人は、なるべく早く研修を受けておくと安心です。なお、新人の介護職員は採用されてから1年間は受講の猶予期間があります。就職してからでも研修は受けられるので、慌てる必要はありません。
認知症介護基礎研修の受講が免除される条件
介護の資格を取得していれば、認知症介護基礎研修の受講が免除されます。具体的な資格は、介護職員初任者研修以上の介護資格や、医療系の資格、福祉系の国家資格などです。
詳細な資格の一覧は次のようになります。
義務化の対象外となる職種
看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員養成研修1級課程・2級課程修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師
上記資格をすでに取得している人や、2024年4月までに取得できた人は問題なく働けるというわけですね。
ただし、受講免除の条件には複雑な部分もあります。福祉系の高校の卒業者は無資格でも受講免除だったり、認知症サポーター養成講座の修了者だと受講免除とならなかったりします。もしも自分が受講免除になるか悩んだら、正確な条件を確認するのがおすすめです。
正確な条件は以下のURLから確認できます。
>>厚生労働省 「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)(令和3年3月 26 日)」の送付について
認知症介護基礎研修とは?
認知症介護基礎研修は認知症の人への対応力を高めるための研修です。インターネットを使用したe-ラーニングに対応していますが、会場を用意して集合形態で研修を行う場合も多いようです。
認知症介護基礎研修の受講には、費用があまりかかりません。
自治体によっては無料の研修もありますし、高くても受講料とテキスト代込みで5000円程度。概ね1000円から3000円程度の費用が一般的です。さらに研修は6時間で終わるので、1日あれば終了できます。
修了試験もありませんので、介護系の資格や研修の中ではかなりお手軽な部類だと言えるでしょう。ただし、申し込みは事業所の責任者を通して行います。個人で申し込めるわけではありませんので注意が必要です。
認知症介護基礎研修の具体的なカリキュラム
研修は午前中の講義と午後の演習の2部構成です。講義は認知症の人の理解と対応の基本、演習は認知症ケアの実践上の留意点となります。
自治体によって若干の違いはありますが、どこで受けてもほぼ同じ研修内容になるようです。ここでは例として大阪府堺市のカリキュラムを紹介します。
オリエンテーション
・研修の目的と目標
・認知症の人を取り巻く現状【講義】認知症の人の理解と対応の基本
①認知症の定義と原因疾患
②認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
③認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
④認知症ケアの基礎技術【演習】認知症ケアの実践上の留意点
演習Ⅰ 認知症の人とのコミュニケーション
①認知症の人との基本的なコミュニケーション
②不適切なケアの理解と回避方法
演習Ⅱ 行動の背景を理解したケアの工夫
③病態・症状等を理解したケアの工夫
④行動・心理症状(BPSD)を理解したケアの選択と工夫演習Ⅲ 振り返り
自身のこれまでの振り返り
アンケート記入、修了証書交付
おすすめの介護資格3選
今後のキャリアやスキル、収入アップのためには認知症介護基礎研修以外の介護資格の取得がおすすめです。
認知症介護基礎研修は介護資格として扱われますが、内容が初歩的であるため自分のスキルを証明したり、収入アップにつなげたりする資格としてはあまり適していません。認知症介護基礎研修に対して資格手当を支給している介護事業所もあまりないでしょう。
長く介護業界で働いていくつもりであれば、スキルや収入をアップさせてくれる資格の取得をおすすめします。認知症介護基礎研修よりも取得に費用や時間がかかりますが、将来的には様々な面でプラスに働くでしょう。具体的には次の3つの資格です。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は介護初心者向けの資格です。介護資格の中では取得にかかる費用や時間が比較的少なく、介護職を志す人や介護職になりたての人に向いています。介護の資格取得を考えているものの、どの資格を取ればよいかわからない場合は介護職員初任者研修を取得すると良いでしょう。
介護職員初任者研修を取得するメリットは4つあります。
- 研修の内容が初歩的で介護初心者にも理解がしやすい
- 取得にかかる費用や時間が比較的少ない
- 取得すると資格手当が出るため給料アップに繋がる
- 行政や介護事業所による資格取得のためのサポートが手厚い
介護職員初任者研修のカリキュラムは合計130時間で、修了には2週間から3ヵ月程度必要です。受講費用は2万円から10万円程度が相場となり、受講先のスクールにより異なります。
住んでいる市区町村や就職している介護事業所によっては資格取得のために補助金を支給している場合もあるので要チェックです。
資格を取得すると資格手当が付いたり、時給があがる場合もあるので収入アップに繋がります。また訪問介護で働けるようになったり、上位資格である介護福祉士実務者研修の一部履修科目が免除されたりと、資格取得のメリットが多いのが特徴です。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は中堅介護職向けの資格です。介護職員初任者研修の内容を踏まえた実践的な研修を受けます。介護福祉士の取得を目指す場合や、訪問介護のサービス提供責任者になるのであれば取得すると良いでしょう。
介護福祉士実務者研修を取得するメリットは3つあります。
- 介護の実践的な知識や内容が学べる
- 受講条件がないので誰でも受講できる
- 介護福祉士試験の受講条件のひとつを満たせる
介護福祉士実務者研修の取得にかかる期間は6ヵ月程度、費用は7万円から15万円程度です。
取得すると資格手当が付きますが、介護職員初任者研修分の手当しか出ない場合もあります。一番大きなメリットは介護福祉士試験の受験資格の一部を満たせることなので、介護福祉士を目指す場合は是非とも取得しましょう。
介護職員初任者研修を修了していなくても受講可能ですが、内容が発展的なものであるため完全な介護初心者には少しハードルが高めです。ただし現場でしばらく働いていれば理解できる場合が多いので、現役の介護職であればいきなり介護福祉士実務者研修を受講してしまっても問題ありません。
介護福祉士
介護福祉士は介護のエキスパートであることを証明する資格です。資格取得のためにはさまざまな条件がありますが、取得すると収入アップやキャリアアップに繋がります。介護業界で長く働くのであれば是非とも取得を目指すと良いでしょう。
介護福祉士取得のメリットは3つあります。
- 資格手当や給料の上昇が期待できる
- 介護現場のリーダーになるためには必須
- 介護業界の就職や転職を有利な条件で行える
介護福祉士と無資格の介護職では年収に数十万円程度の差があります。介護福祉士資格の取得には費用が掛かりますが、長く働く場合は収入面でのメリットが大きくなるでしょう。
また就職や転職の際は介護福祉士を取得している方が有利です。子育てや親の介護など、何らかの理由で介護職を離れていたとしても、介護福祉士資格があれば復職が容易になります。
働きながら介護福祉士を取得するには3年以上の実務経験と、介護福祉士実務者研修の取得、介護福祉士試験への合格が必要です。取得条件は難しいですが、大きいメリットを考えると取得する価値の高い資格だと言えます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
無資格の介護職が今後も働いていくために必須となる、認知症介護基礎研修についてご理解いただけたでしょうか?
- 2024年4月から無資格の介護職は働けなくなる
- 認知症介護基礎研修は費用と時間があまりかからないお手軽な資格
- 資格を取得するなら収入やスキルがアップする資格がおすすめ
以上参考にしていただけたら嬉しいです。
認知症介護基礎研修は簡単に取得できるので、現在無資格でもあまり慌てる必要はありません。時間に余裕があるのであれば、収入アップやスキルアップに繋がる資格の取得を目指すと良いでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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